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山奥に辿り着く

奥地好きの私。

なぜって、遠く離れた人々と何かをシェアするのが嬉しくてたまらないからです。例えば同じ分野の仕事とか、マラリアを減らそう!というミッションとか、悩みとか喜びとかです。「ここは今まで行った中でで1番奥地だろう」という場所へ行きました。日頃ボートの旅ばかりしていますが、今回はロードサイドチームへ加わりました。つまりトラックで行けるところまで行く!チームです。

ファンド側の要求で年4回行っている(たまに予算が遅れすぎて流れますが…)クリニックのインタビュー調査。ガダルカナルの全クリニックを周って集めるものの、インタビュー内容が現状に沿っていなく、上手く活用できないないと書いたあの調査です。インタビュー内容は中央機関の承諾をもらって改定をしました。今回はそのトライアル。そして更に、毎度毎度遠すぎて行けていない場所へも足を運ぼうということにしました。初の山間部です。

車で行ける最後のポイントまで、地図で見ると100kmくらいに思えるにも関わらず、4、5時間かかりました。道路が超未発達なソロモン。首都を出発して30分程度で、コンクリートはなくなります。そこからは穴ぼこだらけのひどい道、車で川を渡ることもしばしばです。そんな事情から、車は町を出るなら否応なくトラックを使います。ソロモン人がすべての車を「トラック」と呼ぶのは、こういう背景からかもしれません。


さて、長い道のりガタンゴトン揺られて「ああ疲れた、ようやく着いた」と車を降りたものの、むしろそこからが勝負でした。「けっこう歩くから、食糧を持っていけ」と言われ「え…、そんなに?」と嫌な予感。「どのくらい歩く?」と聞くと「うーん、うーん場合による。じゃあ20分」。ソロモン人による時間の換算は信用なりません。なのでとりあえず水と食料を持ちました。

山頂から山を下り出しました。赤土の足元は思いのほかつるつるして、全員サンダルを脱いで歩きました。私はすぐにも転び、しかも土が滑って全然立ち上がれず、2人に抱えられて立ち上がりました。しかし再び歩き出してまたすぐ転びました。どうしてみんなそんなにスタスタ歩けるんだろう?

荷物持ちに雇われた同僚の息子にしがみつきつつ、なんとかつるつるの山を下り切りました。もちろん、20分はとっくに過ぎています。今度はものすごく急な山下り。「どこを歩くの?」という山道。日本の山だと、なんとなく足をかけるような場所がありますよね、でもそれがないのです。ここでも例の息子に支えてもらいながら一歩一歩慎重に下りました。こんなに足がガクガクと震えたことがあるでしょうか。それほど暑くもないのに顔から汗がぽたぽたと落ちます。緊張と、体力の限界です。何よりも、この道を妊婦や病人が通るというのが信じられない。

ようやく山を下り切り、川に到着。「あとは川を渡るだけだから」。

そうか、きっともうすぐ!やや流れの速い川渡り。ここでも足元はつるつる。ジャングル歩きと川渡りを繰り返していたところ、途中でショッキングな議論になりました。

「アヤノにはここで待っててもらった方がいいかもしれない。このスピードだと帰りは夜のジャングルを歩くことになるよ。」

そんな!ここまで来たのに…!

「あとどのくらいあるの?」
「あと5回川を渡る。」
「…。本当の本当に川を5回渡るだけ?急な山を登ったり下ったりはない?」
「そうだ。」
「…。頑張って急いで歩くから、私も一緒に連れていって。」

というわけで、ここからスピードアップして頑張りました。転ばないように慎重に、でも急がないと、本当に日が暮れてしまう。

車を止めてから、おそらく2時間くらい歩いたでしょう。クリニックに到着しました。足も頭も疲れきってフラフラですが、インタビューをしなくては。

薬の棚が壊れていてネズミの被害に困っている、という状況がありました。
いつも「あれが必要だ。」「これが欲しい。」とかかれていただけのインタビューシート。今回は証拠写真をしっかり撮って、事態の深刻レベルも書き込みます。

「データ集めで終わっているインタビューなのだけれど、こちらがきちんとしたレポートをあげることで、向こうからのサポートをお願いしたいと思っているから」という話もしました。州政府のスタッフが自らここまで来た、ということで現地の人にも喜んでもらえました。
帰りは20分くらい、夜のジャングルを歩くことになってしまいましたが、なんとかトラックを止めた場所まで戻りました。

その日は更に次のクリニックへトラックで移動して、そこのナースにご飯を炊いてもらい、途中の川で水浴びをした私は寒さに耐えきれず、持っていた服を全部着込み、寝袋に包まったままそれと缶詰を食べ、クリニックの寝台の上でぐっすり眠りました。

ハードなフィールド活動はオフィスワークのモチベーションになります。あれだけの苦労を無駄にしたくない…!ボートでクリニックを周ったシーサイドチームもくたくたになって帰ってきました。これから全クリニックのデータ分析です。