未知の世界を開いた探検
現地の職場に配属された次の日のこと。「出張行くか?」とお誘いを受け、「もちろん!」と答え、行くことになった初めての出張。
「どこに行くの?」と聞くと、 マネージャーはガダルカナル島を表す横長の円を描き、南側海沿いの真ん中部分を指して、ここだ、と言いました。私たちの居る首都ホニアラは北側の海沿い真ん中にあるので、真逆です。
「どうやって?」
「ボートだよ。」
陸を突っ切って行った方が随分と早そうだけれど、陸は山とジャングルで、道がないのだそうです。
「どのくらいかかるの?」
「8時間くらいかな。」
「持ち物は?」
「そうだな…懐中電灯かな。」
前日に確認できた情報はこのくらいで、その日の夜に荷造りをし、次の日朝早くオフィスへ向かいました。行くメンバーは男性スタッフ7人と私。しかも所属するマラリア対策課から行くのは私だけだったので、全員初めまして。
トラックでボートのある岸まで向かい、ボートに初乗船!すごく興奮しました。ヤマハのエンジンがついた小さなボートは勢いよく進んでいき、首都を離れるにつれ、海は綺麗なブルーになっていきました。
船の中では、他のスタッフとずっとしゃべっていました。ソロモンでの生活がスタートしたばかりなので、色々なことを知りたくて、どんな話題も興味津々です。
「アヤノ、今から行く村はね、裸族が住んでるんだよ。」「えっ?」
「ブラックマジックを使える人もいるし、瞬間移動ができる人もいるんだ。首都でパンを買って、村にパンがほかほかのうちに持って帰れるんだよ。」「ええっ?」
瞬間移動にも驚きますが、そんなささやかなことに使うの?とも思いますよね。今思えばのどかなソロモン人らしい一面です。
4,5時間くらい経った頃でしょうか。運転手が無人島にボートをつけました。陸地には緑が生い茂るなんとも美しい島でした。
「トイレ休憩!」
ああそうか。確かに長いことトイレに行っていない。
世界では衛星なトイレへのアクセスがない人は42億人と言われていますが、私の初出張トイレはは本当に綺麗な場所でした。
「ここからは荒波になるよ」
首都から見て島の裏側は、外海で波が荒いのだそう。天気もなんだか悪くなってきました。さっきまでブォーンと進んでいたはずのボートが、波に押されてがっこんがっこん進むようになりました。毎度おしりが浮きます。気を抜くと海に放り出されそうなので、椅子の縁をぎゅっと掴んで辛抱していました。
2時間くらいたったあたりで、ドライバーは運転を止めました。
「着いたぞ!」
陸を見ても、この2時間ほぼ変わらない風景と、同じ風景。ここが目的地ってよく見分けられるなぁ。
「波が荒いから、ボートを岸につけたらみんなはすぐに飛び降りてボートを陸側に押してくれ!波に引き戻されるからな。あっ、アヤノはそのまま座ってろ!」
そう言って、ドライバーはいっきに陸へ向かってボートを走らせました。7人は飛び降りて、ボートを砂浜の上にガガガーっと押し上げました。
「すごい力!」
私は1人滑るボートの上に座ったまま、感激していました。無事到着。
ボートを降りると、村人が集まってきました。
確かに、何人かは上半身裸でした。女性も含めて。ここまで伝統が残る村に足を踏み入れたのは初めて。ボート移動での興奮冷めやまぬまま、2週間この村で過ごすんだ…という期待にドキドキしながら、みなさんに向かって「Hello」と笑いかけました。すると、女性の1人が
「まずスイムしなきゃね。」(ソロモンでは、シャワーのことをスイムという。)
と、私に呼びかけてくれました。
気付けば、ボートのしぶきを浴びて全身びしょびしょ、ガチガチに冷えていました。
1日移動だったこの日は、スイムをして体を乾かし、村人のお母さんたちが炊いてくれたご飯を食べ、すぐに眠りにつきました。
さて、この村での2週間の活動は次回。